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こんにちは。各務原まつおクリニックの理学療法士の高井です。
本日は運動において非常に大切な「AT」についてお話したいと思います。
運動効果を最大化する「AT」の重要性
健康のために運動が大切であることは広く知られていますが、どんな運動でも同じ効果が得られるわけではありません。漫然とした運動や、不適切な強度の運動は、期待する効果が得られないばかりか、かえって健康を害する危険性もあります 。本当に効果的で安全な運動のためには、個々の身体能力に合わせた適切な運動強度と方法を選択することが不可欠であり、その鍵となるのが「嫌気性代謝閾値(AT)」の理解です。
嫌気性代謝閾値「AT」とは?
嫌気性代謝閾値(Anaerobic Threshold: AT)とは、運動中に体が酸素を使う「有酸素性代謝」を主とする状態から、酸素を使わない「嫌気性代謝」へと切り替わり始めるポイントを指します 。この閾値を超えると、体内に乳酸が急激に蓄積し始め、疲労感が増して運動の継続が難しくなります 。つまり、ATは体が効率的に有酸素運動を続けられる上限の強度を示す、非常に重要な生理学的指標です。
「AT」を守らないとどうなる?
では適切な運動強度であるATよりもきつい運動をするとどのようなことが起こるのでしょうか。
- 疲労の蓄積と運動継続の困難さ: ATを超えると、体内に乳酸が急激に蓄積し、筋肉痛や強い疲労感が生じます。これにより、運動を長時間続けることが非常に困難になりま
心臓への過度な負担: AT以上の過度な運動は、カテコラミン(ストレスホルモン)の増加やアシドーシス(体が酸性に傾く状態)を引き起こし、心臓に過度な負担をかける可能性があります。これにより、不整脈の誘発や、心不全患者においては心機能のさらなる低下に繋がる恐れがあります
。
ATを基準とした運動療法がもたらす効果
ATを基準とした運動は、生活習慣病の予防と進展抑制、そして心血管イベントのリスク低減に多大な効果をもたらします。
- 生活習慣病の改善と予防: ATレベルでの運動は、インスリン感受性を高めて血糖コントロールを改善し、糖尿病の予防・改善に繋がります 。また、血管内皮機能を改善して血圧を安定させ、高血圧の予防・改善に寄与します 。さらに、AT以下の「中等度」の運動強度では脂肪が効率的に燃焼されるため、肥満の解消にも有効です 。
- 心血管イベントリスクの低減: ATレベルでの運動は、心臓に過度な負担をかけずに心機能を向上させ、心臓発作や脳卒中といった心血管イベントの発生リスクを総合的に低減することが可能です 。これは、疲労物質である乳酸の急激な上昇を抑え、心臓へのストレスを軽減するためです 。
まずは専門機関への相談を
ご自身のATを知り、それに基づいた運動を行うことは、健康寿命を延ばし、生活の質を向上させる上で非常に有効です 。最適な運動プログラムのためには、運動を開始する前に専門機関で、ご自身の健康状態や運動能力を正確に把握することが重要です 。当院ではATを調べることができる『CPX検査』を実施しています。CPX検査でご自身のATを測定してみてはいかがですか?